塾長ブログ
令和7年度千葉県公立高校入試の講評
2月18日、19日と千葉県公立高校入試が行われ、今年の高校入試が一つの節目を迎えた。
令和7年度千葉県公立高校入試の入試問題について、当塾の講評を書いてみたい。
5教科合計の平均点は、昨年度の平均点よりも低くなりそうだ。
上位校よりも中堅校を志望する受験生の方が、昨年度よりも得点が低くなる度合いが大きいと予測される。
■国語
平均点は、昨年(50.4点)よりもやや上がると予測している。
論説文の記述問題の字数が30字以上から、40字以上に増加した。また、抜き出し問題は小説・論説のいずれについても無くなった。選択問題の選択肢は、言い換え表現が多く、細部の違いを読み取る問題もあったが、論説・小説ともに比較的読みやすい文章であったため、昨年度よりも平均点は上がると予想する。古典も読みやすい文章であった。聞き取り問題は、問題・配点ともに減り、その分、古典の配点が2点増えた。
大問1の聞き取りは、「聞き手に正しく伝えるには?」がテーマ。理解しやすい内容ではあったが、書きとったメモと選択肢の細かい違いを照合する作業はやや難しかったかもしれない。
大問2、3の漢字の読み書きは、例年並みの難易度。読みでは「謄本(とうほん)」、書きでは「初志(貫徹)」で差がついたと思われる。
大問4の論説文『ルビンのツボ‐芸術する心と体』は、選択問題と、記述問題のみの構成。選択肢は“言い換え表現”が多く、文章中の言葉をそのまま使っている選択肢はむしろ誤答になる問題が多かった。抜き出し問題に慣れている受験生や小手先のテクニックだけで解く受験生は、答えにたどりつくのが困難であった。記述問題に関しては、確かに字数は増えたが、記述問題に慣れている生徒にとっては、部分点は十分にとれる問題であった。
大問5の小説『墨のゆらめき』は、選択問題と記述問題、文法問題が1題の構成。設問数は増えたが、配点の変化は無し。主人公の「遠田薫」の書道に対する考え方を中心に出題された。セリフと地の文、バランスよく出題されていたため、心情把握に関する問題以外でも差がついたと考えられる。記述問題は、指定語句を使って心情を表現する問題であったが、難易度はそれほど高くはなかった。
大問6の古典『正法眼蔵随聞記』は、配点が例年よりも2点増えて20点満点。読みやすい古典であり、設問も解きやすい選択問題が多かったため、高得点も狙える大問となった。さらに、漢文の返り点についても選択問題になっているため、ケアレスミスも比較的少なかったと予想する。記述問題は文章中の言葉を使う問題ではないので、きちんと古文の内容を理解した上で、自分の言葉で表現する力が必要である。
大問7の条件作文は、書く内容を3つの中から選び、それに対して自分の体験もふまえて論理を組み立てる問題。
昨年までの作文は、テーマが与えられていたが、今回は自分でテーマを決めてから論を組み立て始めるため、いつもよりは作文に時間がかかってしまったという受験生がいたであろう。
■数学
平均点は、昨年(51.9点)並みと予測している。
大問1は、確率と四分位数の問題が注目される。確率の問題は、カードの枚数が8枚で組み合わせが多く、かつ、直方体の2点間の距離計算を伴うため、条件を満たす組み合わせのカウントを誤りやすい。ここで多くの時間を消費してしまうと後続の問題を解く時間が圧迫されてしまう。四分位数は思考を要する問題。データの個数が4の倍数であり、すべての四分位数が2数の平均であること、得点が4の倍数になることが分かれば解けるだろう。作図は例年と比べて難易度が低かったが、問題用紙左上にある110°を見落とすと解けない。
大問2は、二次関数の問題。千葉県でよく出題される平行四辺形を絡めた問題だ。指定三角形の面積と幅から切片を求め、平行四辺形で定石である合同な三角形を用いると、計算量少なく答を求められる。
大問3は、平面図形の問題。「二等辺三角形の頂角の二等分線は底辺を垂直に二等分する」を利用する証明問題で、その表現方法を知っていれば書きやすかった。後続の計算問題は、正三角形、60度・30度の定規型、相似を組み合わせて解く問題で、数学でリードするタイプの上位校受験者は解きたい問題だった。
大問4は、読解系問題で、1ページ半と更に文量が増した。ただ、題材は円錐を転がす問題で、見たことのあるモデルである受験生が多かっただろう。後半は、整数が絡む問題。テクニックを使わなくても、地道に公倍数で解けるが、最後の問題であり時間との戦いであったであろう。
■英語
平均点は、昨年(56.4点)よりも下がると予測している。
読解問題の語彙レベルと設問レベルが上がっているため、予定よりも長文に時間をとられてしまった受験生が多かったであろう。特に読解の設問については、丁寧に読まないとミスをしやすい設問が複数あったため、上位校の受験者もすべての記号問題を正解にするのは難しかったと考える。対話文の難易度が易しかっただけに、国語と同様、時間配分もポイントになったと考えられる。
大問1から4のリスニングは、昨年度と同様に単語の書き取り問題はなく、記号問題のみ。「聞こえた単語=正解」ではないので、内容を正確につかむ対策とトレーニングが必要である。
大問5の文法・語彙の問題は、基礎的な文法力や語彙力を問うものが多く出題された。並び替えの問題では、(4)の問題で、“such as soccer” を作り、さらにそれを主語にするという問題。県立入試ではあまり見られない問題のため、この問題については正答率は低くなるであろう。基本的な並び替え問題の習得の上に、副詞句や形容詞句も含めた問題演習が必要である。
大問6の条件英作文は、昨年度同様に、2コマのイラストが2題出題され、それぞれ1ずつ空欄を埋める問題。(1)は書きやすいシチュエーションであったが、(2)について「(手の届かない)本をとってください。」という表現を正確に書くことができたかどうか。takeやbringを使うと不自然なため、getを用いる表現が正解。それ以外の表現は得点にならない可能性が高い。(※採点基準は高校により異なる)
大問7の長文読解(プレゼン・広告)は、大問7(1)の長文読解は昨年度と同様、プレゼンテーションが題材となったが、図表を読み取らせる問題は出題されていなかった。発表の順番を問う問題や細部を読まないとミスをしてしまうような内容一致問題があるため、英語を丁寧に、かつスピーディーに読む力が必要である。(2)の広告の問題も(1)同様、複数の情報の中から正しい情報を的確に選ぶ緻密さが要求される。
大問8の長文読解は、「生きがい」に関する文章。読みやすい文章ではあったが、長文の中にはencourage,depressedなど、やや難易度の高い単語も入っていたため、難しいと感じた受験生もいたであろう。昨年度から出題された10語程度の要約問題は、今年度も出題された。昨年よりは書き易かったはずだが、解きなれていない受験生は無回答の可能性もある。設問ではミスを誘発するような選択肢もあるので注意が必要である。
大問9の対話文は、きちんと前後判断できれば、満点をとれる内容。大問9で十分に時間を残していれば、選択肢を吟味して選択できるが、(4)は時制をよく見て解かないとミスをしてしまう可能性がある。
■理科
平均点は、昨年(59.1点)並みと予測している。
昨年比べて記述の問題が2題出題されていたが、今年度の入試では記述の問題が出題されなかった。
その分思考力を問われる問題は増加した。
大問1は、例年通り小問が出題。難易度は低く、正解したい。
大問2は、動物の分類が出題。(3)は選択肢から昆虫をすべて選ぶ問題。昆虫が頭胸腹に分かれていること、胸に足が3対ついていることから図から判断ができれば正解できる。(4)はただし書きを読まずに解答すると誤答してしまう問題。
大問3は、光の屈折の問題。(2)は2回屈折する問題で、屈折の本質的な力が要求される。(4)は作図の問題で難易度は高い。
大問4は、空気中の水蒸気の問題。大問の難易度は高く、得点の差がつく大問。(3)では湿度について本質的な理解をしているかが問われている。(4)では空気30m³中の値を求めなければならないが、1m³中の値を答えに書いてしまうケースが出てくる。
大問5は、みりんの蒸留の問題。難易度は易しく、正解したい。
大問6は、太陽の日周運動の問題。(3)はその場で思考する力が必要。(4)は最近の入試で頻出の問題で、全県の正答率は低いと思われるが、最難関校受験者は正解したい。
大問7は、ダニエル電池の問題。難易度は易しく、正解したい。
大問8は、蒸散の問題。難易度は易しく、正解したい。
大問9は、力学的エネルギーの問題。大問の難易度は高い。(2)(3)は選択式の問題だが誤答しやすい小問になっている。入試前の演習量で得点の差がつく大問になっている。
■社会
平均点は、昨年(57.5点)よりも下がると予測している。
複数の選択肢が合っていて得点になる完答問題は昨年度6題→今年度10題に増加した。
用語記述の問題が昨年度5題→今年度1題に減少。記述問題は例年通り3題の出題。それ以外は記号選択問題であった。
大問1の3分野融合問題は、例年通り4題の出題。⑴の問題はこれまでに見たことがない問われ方であったので、戸惑った受験生も多いのではないか。生成AIに関する出題があったのも特徴的である。
大問2の地理(日本地理)は、ぶどうやみかんなどの産地が問われるなど典型的な出題であった。ハザードマップを絡めた地図の読み取りの問題は、これまで学習した地形図の読み取りで対応可能な問題である。
大問3の地理(世界地理)は、フィヨルドのでき方を説明する問題で差がつきやすかったと思われる。上位校を狙うには、用語の暗記にとどまらず、なぜそうなるのかもあわせて覚えたい。
大問4の歴史(前近代史)の⑸は浮世絵がゴッホらに影響を与えたという内容だが、これは教科書の本文には書かれていない内容である。高得点を狙うためには、教科書の本文のみならず、周囲に書かれているコラムや写真などにも目を通そう。
大問5の歴史(近・現代史)は、⑵の代名詞が指す人物を答える形式はこれまでにはなかったので、戸惑った受験生も多いのではないか。また、古い順に並べ替える問題は、約10年の間の出来事の並べ替えで難易度が高かった。近現代については細かに問われるので注意が必要である。
大問6の公民(経済)は、「ワーク・ライフ・バランス」「企業の社会的責任」「日本銀行の役割」など比較的取り組みやすい問題であった。
大問7の公民(政治)は、⑶の直接請求権の記述問題は基本的な内容であったが、記述形式の出題に慣れていないと、難しいと感じた受験生も多いだろう。
大問8の公民(国際)の⑴のマイクロクレジットはSDGsに絡めた出題である。今後も同様の出題が続くことも考えられるので、SDGsに関連した用語は覚えておこう。
追伸)
受験生の皆さん、お疲れ様でした。
全員の合格をお祈りしています。