塾長ブログ

2024.02.22

令和6年度千葉県公立高校入試の講評

2月20日、21日と千葉県公立高校入試が行われ、今年の高校入試が一つの節目を迎えた。
令和6年度千葉県公立高校入試の入試問題について、当塾の講評を書いてみたい。

全体として、5教科合計の平均点は、昨年度の平均点よりも上昇しそうだ。
ただ、難易度の高い問題の割合が高まっているため、学力上位層の平均点の上昇幅は限定的と思われる。

【国語】
今年度の問題も例年同様の問題構成である。
変更点としては,①大問三「漢字の書き取り」が5問→4問,②大問四の選択問題で正解を複数選ぶ問題が出題,の2点である。
大問四・五・六に各一問ずつ「三十字以上三十五字以内」の記述問題が出題されており,例年よりも分量が多くなっている。特に,大問四・五の記述は本文とは別の,設問中の文章を絡めた問題で,2つの文章の複数個所を組み合わせたり,本文中にはない語句を用いたりするので,非常に難易度が高くなっている。試験時間50分にしては,設問数が多く,難易度が高い問題が含まれるため,問題の取捨選択が必要であった。
一方で,大問一の聞き取り問題,大問五⑴~⑸,大問六⑴~⑷,は比較的取り組みやすい問題であった。また,作文は,資料分析型の出題ではなかったため,前段は書きやすかったのではないかと思われる。よって,上位校では点差がつきにくかったのではないか。
平均点は昨年度よりもやや上昇すると予測する。

【数学】
例年同様の問題構成である。
大問1は全体として難易度が低下し、基本的な問題の出題となった。箱ひげ図の問題は出題されなかった。円の角度計算はアルハゼンの定理そのものだ。確率の問題は全国の公立高校入試で出題が増加している、座標を絡めた出題となった。座標(3,3)が含まれるかどうかの判定は、コンパスを使えば容易だ。作図は、円錐の展開図の中心角、底面の半径、母線の関係式を知っていると解きやすい。
大問2の関数は、線分の長さの問題であり、上位校の受験生の多くが(2)まで解けたであろう。
大問3の証明問題は、千葉県でよく出題される、角度の加減算、または円周角の定理の逆を用いる問題だった。よく出題されるパターンのため、解きやすかったと思われる。 (3)の計算問題は面積を求める三角形とは別の小さな相似の三角形の面積を求め、相似比を利用すると計算量少なく解くことができる。複数の三角形の相似関係を利用し、かつ二次方程式を用いて辺の長さを求めるため、上位校の受験生でも解きにくく深追い禁物の問題だった。
大問4の読解系問題は、一次関数の傾きや切片がnを用いた式になる点で、上位の私立高校の入試では一般的だが、公立高校ではあまり出題されないパターンだった。
数学全体として、昨年度よりも解きやすく、上位の私立高校に向けた学習を行ってきた受験生にとっては、解き慣れたパターンの問題が多かったのではないだろうか。
平均点は昨年度よりもやや上昇すると予測する。

【英語】
一部細かな変更はあったが、全体としては大きな変更はなかった。
特に注目すべき変更点は、大問9「対話文」の記述問題が選択問題になり、簡単になったことや英作文が4コマのイラストから、2コマのイラスト2題に変更したことである。英作文については、全国の入試英作文に取り組み、基本的な英作文のスタイルが身についていれば、大幅な減点はなかったであろう。
大問7の長文問題については、複数の情報を素早く処理する力に加えて、教科書改訂後に脚注が減った「語彙力」で差がついたであろう。「agriculture」「improve」「disappear」などの難易度の高い単語も普段の読解練習を通して覚えておく必要がある。文法の問題だけでなく、情報処理能力が問われる読解問題を数多く解いてきた受験生は、高得点は取れる英語の長文問題であった。
大問5の文法の問題は、特に難しい問題はなかった。序数詞・関係代名詞(目的格省略)・間接疑問文など、高校受験に狙われやすい文法事項やスペルをしっかり学習していればミスなく解けたと思われる。
大問8の(2)では、英問英答の問題がなくなり、英文の要点を英語で表現する問題に変わり、一部難易度の上がった設問も見られた。
記述問題が減ったこともあり、全体としては、やや平均点はやや上がるであろう。

【理科】
例年同様の問題構成である。
大問1の小問集合、大問2の気体の性質、大問3の光合成、大問9の食物連鎖は、基本的な知識を問う問題だった。
大問4の電流が流れる銅線が受ける力の問題で、電流の大きさによって銅線がふれる角度が変わる。平成31年の佐賀県一般入試で出題された問題の簡易版であり、全国の入試問題を活用した演習を行っていれば違和感なく解けたであろう。コイルを棒磁石が横から通過する問題は今や珍しくないので、多くの受験生が解けたと思われる。
大問5の柱状図の問題は、凝灰岩の層が2つあることに気づくかが鍵。気づけば難易度はそれほど高くない。
大問6は浮力の問題で、物体を水に沈めていくとばねの伸びが小さくなっていく。そのグラフがばねの伸びで提示されていて伸びを力に変換して解くこと、動滑車との組み合わせを理解して解くことが必要であり、難易度が高い。令和3年の岐阜県の問題を少しやさしくした内容となっており、他の都道府県の問題も経験しておくと良い。
大問7は月の問題が中心で、月と太陽の大きさ、地球と月、地球と太陽の距離の計算問題が出題された。よくある三角形の相似を利用する問題だが、桁数が大きいので計算間違いに注意したい。太陽は月の400倍、地球からの距離も400倍を知っていると、検算をしやすかったであろう。
大問8は銅とマグネシウムの酸化の問題。オーソドックスな出題だった。
基本的な問題が多いが、柱状図、動滑車を伴う浮力関連のグラフ、計算分野の難易度が上がっているため、昨年度よりも平均点はやや下がると予測する。

【社会】
出題形式に大きな変更はなく,例年通りである。
地理分野は比較的基本的な知識で解ける問題が多かった。ロシアの高床の住宅についての記述問題は,2021年の徳島県でも類題が出題されている。
歴史分野の鎌倉時代の記述問題も2022年の静岡県で類題が出題されていた。したがって,全国の過去問を幅広く学習していれば、地理・歴史の記述問題は2問とも解ける問題であった。また,1960年代以降の現代史は近年問われやすい分野なので要注意である。
大問6~8の公民分野の記述問題は,「社会資本整備のための」に続く記述であったため,「公共事業」や「公共投資」のワードではじめる必要がある点がポイントである。また,年表中の出来事から経済成長率を考える問題が出題されており,解きにくい問題であった。
昨年は追検査のみの出題であった正答を「すべて選ぶ」問題や、資料から思考する問題など取りにくい出題もあったが,それ以外は基本も多かったため,平均点は昨年よりもやや上昇すると予測する。

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